ドクダミ院長の独り言
2020-03-03 19:58:00
意氣を合わせる
「あんた、あれ、やるんやろ?」
いつものように朝の挨拶をした後に、私とのリハビリを待ってくれていた利用者さんが言った言葉です。
私はすぐに、カバンから結び上がる手前の精麻を出して、
「これですね!」
と言うと、
利用者さんは、
「そうそう!あれするやつな!」
と指先で精麻を捻る動作をしながら笑顔で言いました。
この利用者さんは、
重度の認知症があると診断されていますが、
私はお会いした当初から、
脳血管障害による高次脳機能障害によってコミュニケーションが上手く取り辛くなっているのだと感じていました。
・やる氣が起きにくい
・物を覚え辛い
・字を読むのが難しい
・物の名前や言葉の使い方を間違ってしまう
などの特徴があるようですので、一般的に行われる認知症検査では重度という判定が出るであろうことは想像できます。
しかし、
一週間に1、2回しか会わない私と前回、どのような運動をしたのか、どのような会話をしたのかを覚えておられます。
きちんと学習できており、少しづつ
上達しています。
ただ、相手がわかるように伝えることが難しい。
物の名前やその時の状況を表す言葉が出しにくいので、
これ、それ、あれ、それ、
など代名詞中心の会話となります。
相手に氣が向いていなければ、正直何を言っているのかはわからないでしょう。
ご家族がいつも私に、
「何を言っているのかわからないし、こっちの言うことも全くわかってくれません」
と言うのもよく分かります。
でも、
私には利用者さんの想いがわかりやすく伝わってきます。
今日も楽しく、
鍼灸の施術をして、
リハビリをして、
終盤に
二人でコツコツ結んできた麻結び紐を出すと
私の右隣にサッと座って、
「どこをしたらええ?」
→ 麻結び紐のどこを左手で持てばよいのか?
私が、
「ここお願いします」と言うと
「これをこうやったかな?」
→ 上側の紐を右手で手間から奥側に回転を加えるので合っていたか?
私が、
「そうそう!次は僕が捻るわな」
この繰り返しで、
一本の麻結び紐を
意氣を合わせながら結びました。
10分程同じ動きを続けると疲れますので、
「少し休みましょう」
と伝えると、
「いや、大丈夫。それより、あんた、これ、これでええのん?こっちがあれちゃうか?」
麻結び紐は、
二本に分けた精麻を一本に結んで行くので、
二本の精麻の太さ(量)に大きな差があると、
結び目のバランスが崩れ不安定な紐になります。
このことを私に伝えてくれたのです。
バランスを整えるために精麻を少し足して、
最後まで、二人で一本の麻結び紐を結び上げました。
「次回、お孫さんにお渡しできる状態に仕上げてきますね」
とお伝えしたら
二人で結んだ麻結び紐に触れながら何度も、
「きれいなぁ♪」
「ええわぁ♪」
と身も心もスッキリしたご様子で喜んでいました♪
こういう場面をご家族に見ていただきたいです。
きっと何か感じることがあるのではないかと思います。
息を合わせ、
氣を合わせる
大切さと心地良さを
精麻でリハビリをすることを通じて実践できました。